○少年非行情勢の変容を踏まえた非行集団等に対する実態把握及び対策の強化について(依命通達)

令和7年3月3日

達(少対)第77号

[原議保存期間 5年(令和12年3月31日まで)]

[有効期間 令和12年3月31日まで]

みだしのことについて、次のとおり実施することとしたので、積極的に推進されたい。

1 趣旨

少年非行情勢については、少年人口が減少傾向を維持する中、令和6年中の県内における刑法犯少年の検挙人員が、前年と比べ約1.8倍に増加しており、懸念するべき兆候がみられる。また、SNS上の犯罪実行者募集情報や地元の非行集団等における人間関係等を通じて匿名・流動型犯罪グループに加担し、犯罪の実行役としてなりすまし詐欺や侵入強盗等の組織的な犯罪を敢行する少年がみられるなど、その情勢は変容を見せつつある。

そのような中、全国の少年のみによる事件の共犯率は、20歳以上の者のみによる事件と比べて2倍以上の高水準で推移している。そのため、周囲からの影響を受けやすい少年を非行集団等から切り離し善導していくことは、少年警察活動の目的の一つである「少年の健全な育成」を期することはもとより、暴力団や匿名・流動型犯罪グループをはじめとする犯罪組織に加担する少年を増やさないためにもその重要性が増しているところであり、福島県警察組織犯罪対策要綱の制定について(令和6年6月13日付け達(組対、務、生企、地企、刑総、交企、公)第346号)において指示した部門間の情報連携の強化も念頭に置き、少年非行情勢の変容を踏まえた非行集団等に対する実態把握及び対策を強化するものである。

2 実態把握等の対象

(1) 非行集団等

実態把握等の対象は、「非行集団等(非行集団(組織性・継続性を有し、少年を主とする3人以上の集団であって、集団として非行行為を繰り返すほか、構成員の非行を容認、助長し、かつ、非行により構成員間の連帯を強める性格のもの。)及び非行集団には至らないものの、非行や不良行為を繰り返している少年を主とする3人以上のグループ)」とする。

なお、近年、少年を取り巻く環境の変化から、SNSや繁華街における深夜はいかい等を通じたつながりの中で、非行少年の緩やかなネットワークが生じているとみられる。こうした緩やかなネットワークについては、従来の暴走族のような階層性は有しておらず、また、必ずしも集団として非行行為を繰り返すものではないため、その実態が見えにくいものであるが、犯罪実行者募集情報の交換、大麻等違法薬物や過量服薬に使用される医薬品の売買、「パパ活」等と称する売買春の周旋等の行為を容認、助長するものであることに加え、その中で培われたつながりが、将来的に匿名・流動型犯罪グループの結成の核となる事例も認められることから、非行集団等として実態把握等の対象とする。

(2) 非行集団等と犯罪組織との関係性

非行集団等の中には、暴力団や匿名・流動型犯罪グループをはじめとする犯罪組織と関係を持つ集団もある。その関係性は、これら犯罪組織の手足となって強盗やなりすまし詐欺、薬物犯罪等に関与するといった従属性がみられる。非行集団等がこれら犯罪組織の主たる人的供給源の一つになっていること等の背景に、非行集団等と犯罪組織との人的つながりがうかがわれることから、これらの関係性についても、関係部門と連携し、実態把握等の対象とする。

3 実態把握の推進

(1) あらゆる警察活動を通じた実態把握

事件検挙、交通違反の取締り、職務質問、街頭補導、巡回連絡、少年警察補導員による活動等をはじめとするあらゆる警察活動を通じて非行集団等の実態把握に努めること。特に、繁華街には、非行少年が多数い集する場所や施設等があることから、施設管理者や関係機関等とも連携し、こうした場所や施設等における非行集団等の実態把握に努めること。

また、少年らがLINE、Instagram、X等のSNSや匿名性の高い通信アプリを利用して緩やかにつながっている現状を踏まえ、サイバーパトロールや事件検挙時等の携帯電話の解析等による情報収集も併せて行うなど、非行少年を取り巻く環境を踏まえた実態把握を推進すること。

(2) 実態把握に当たっての留意事項

ア 実態把握を通じて収集した非行集団等の情報は、少年補導票管理システム等を活用するなどして、生活安全部門において、適切に集約管理を行い、関係部門とも連携して総合的な分析を行うこと。また、非行集団等の結成・解散や構成員の加入・離脱等による集団的不良交友関係の変化は、頻繁に起こり得ることから、常に最新の実態の把握とこれに基づく基礎資料の更新に努めること。

イ 実態把握に当たっては、少年の特性についての専門的な知識と少年の取扱いについての技能を有する少年警察補導員による少年相談、継続補導、触法・ぐ犯・不良行為少年事案の処理、家出少年への対応等が有効であることから、その積極的な運用に努めること。

4 実態把握の結果に基づく対策

(1) 総合的な対策の推進

実態把握を通じて把握された非行集団等に対しては、その組織実態に応じて、違法行為の取締り、離脱を望む構成員の離脱支援・保護等の複数の手段を検討し、非行集団等の検挙・解体と構成員たる少年の健全育成につなげるとともに、匿名・流動型犯罪グループ対策とも連動した総合的な対策の推進に努めること。

(2) ぐ犯調査の活用

実態把握を通じて非行集団等の構成員又は関係者として把握した少年に対しては、ぐ犯調査を積極的かつ適切に活用することなどにより、その健全育成や更生を促すことを通じて、非行集団等への再帰や匿名・流動型犯罪グループへの関与等を未然に防止するための措置を講じること。

(3) 指定暴力団等への加入の強要等に対する措置の活用

暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第16条第1項は、指定暴力団員が少年に対し指定暴力団等に加入することを強要等(以下「指定暴力団等への加入の強要等」という。)をすることを禁止しており、同項違反事実の調査に関しては、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の少年関係規定の運用上の留意事項について(令和6年4月11日付け達(少対、組対)第251号)において示したとおりであるが、非行集団等の実態把握を通じて、指定暴力団等への加入の強要等が疑われる情報を把握した場合には、刑事部門と共有・連携し、同法第18条に基づく措置が執られるようにすること。

(4) 広報の効果的な活用

非行集団等の構成員の検挙等を当該非行集団等の解体につなげるほか、地域の安心感を醸成し、また、同種非行集団等に警鐘を鳴らすため、広報の効果的な活用に努めること。

少年非行情勢の変容を踏まえた非行集団等に対する実態把握及び対策の強化について(依命通達)

令和7年3月3日 達(少対)第77号

(令和7年3月3日施行)

体系情報
生活安全部
沿革情報
令和7年3月3日 達(少対)第77号